5周年回顧録〜自営業の旅 第一章 その4〜
とりあえず、自宅のアパートで自営業としての仕事を始めて見たものの、どうもしっくり来ない。会社員の5年間、朝30分程度の通勤時間を経て仕事を始めていたことに慣れてしまっている。
朝ジョギングし、午前中に雑誌社やセレクトショップに電話、十中八九断られるのだが、それでもひっかかってくれるところがあれば午後から出かけていく。
少しでも後につながる話になれば、そのわずかな希望も胸にがんばろうと言い聞かせる。 その当時のことを思うと、今の仲間達や環境に心から感謝しないと。
夕方家に帰ってきて、早めの夕食の準備をし、食べて、読書して寝る、という生活。
毎日発生する仕事はなかったので、とりあえず格安の事務所をインターネットで探す。
当時はまだアナログ回線。いろいろと調べていたら月の電話代が1万円以上になっていた。
ある日、新宿東口に3万円で借りられるオフィスがあることを発見。板橋駅に住んでいたこともあり、電車で2駅、便利だなあと訪問してみる。
東口改札を降りてアルタ前に出る通路で、突然、トントンと僕の手を叩く人がいる。
「お〜!!なんでココにいるの??」
大学時代のアメリカ留学から帰国後、英語を忘れまいとNOVAに通っていたのだが、その当時の英会話の先生で、よく食事に行ったりしていたブライアンくんではないか。 4年ぶりの再会。
アメリカ人で年は僕より2、3つ下。僕がNOVAに在籍していた時に、そろそろアメリカの会計事務所に入りたい、その準備をしたいからとアメリカへ帰国していた。
「君こそ、今何してるんだ??」
「実は、数日前に自分でビジネスをはじめたんだ。Tシャツの会社なんだけど。」
「おー、夢が実現したんじゃないか。昔から小さくても自分の会社を持ってチャレンジしたいって言ってたからね。」
そう、彼には将来独立したいという話をその当時からしていたらしい。
「ところでブライアンこそ、日本で何してるの?」
「実は僕も第一志望の会計事務所にその後合格して、今はアメリカで働いているんだよ。1週間ほど休みを取って日本に来たんだ。」
アメリカ人にしては珍しいタイプで、非常にシャイな人間なので、彼自身の口からは言わないが、東京にその当時から付き合っている彼女がいるらしい…(笑)。
「お互い、あの頃話してた夢が実現してるんだね〜うれしいことだなあ」
とお互いの近況報告をする。
「ところで、会社名を’Anything’って付けようと思うんだけど、本場の人から見て、この会社名の響きって堂思うの?」
前々から誰か英語圏の人に聞いてみたかった質問をする。
「良い名前だと思うよ。非常に興味深い名前だね。」
ほんの5分程度の会話だったが、当時はまったく実現できると思っていなかった夢を叶えるために一歩踏み出したんだな、と実感。握手をして別れる。
結局、新宿の事務所は、隣の人との敷居もなく、机と電話がおいてあるだけの淋しい場所だったので、その後見つけた北千住の小さな事務所を借りることとなる。
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