2003/06/22

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◆第2回:波乱万丈、放浪の1週間編
◆第2回:波乱万丈、放浪の1週間編

日本のぬるま湯学生がアメリカに来て1ヶ月後、急きょ住む家を失ってしまった。全く予想していない展開。今余分なお金を使ってしまうと今後の生活に大きな影響が出る。

そんな中、知り合いから「教会に行ってみたら。」とのアドバイスが。

「(僕はまったくキリスト教徒では無いが…笑) そっか、教会という手があったか!日本でも’困ったときはお寺に行け’って聞いたことがあるような無いような…?。まあ誰かの家に普通に泊めてもらうより何かと面白そうだし…。」などと簡単に、かつ自分勝手に考えつつ、紹介された場所にバスを乗り継ぎ向かう。2回の乗り換えをクリアしやっと到着。歩道はボコボコでお世辞にもきれいな街とは言えない。

神父さんはこんなずうずうしい訪問者に対し、ちょっと不機嫌そうに、「働くのであれば、泊めてやっても良いよ。」と言ってくれる。他に選択肢の無い僕は、二つ返事で「何でもやります!」。


早速翌朝連れて行かれたのが「SOSセンター」という建物。生活保護や不法入国の人などを支援しているボランティア施設だった。地元企業からの寄付などで運営しているとのこと。

アメリカというのは面白い国で、労働面で「不法入国者」がいるから成り立っているところがあり、厳密に言えば違法なんだけど、細かい事抜きに?社会が受け入れている。

朝向かってみると、施設が開く前からたくさんの人だかりが。その多くがメキシコからの人たちで聞き慣れないスペイン語が飛び交っている。僕の仕事は彼らに対し、サンドイッチを作り配ることだった。朝から晩まで、ちょっと’乾き気味’のパンにハムやチーズを挟み、ある程度の量が出来たところで待合室に配りに行く。何本もの手が伸び、あっという間に無くなる。簡単に考えていたが、休憩はほとんど無くかなりきつい仕事。腹も減るし喉も渇く。

僕も休憩時間には自作の’パサパサ’サンドイッチを食べた。あまりうまくは無いが、食事を与えてくれるだけでもありがたい。飲み物は合成着色料たっぷりのすももジュース。如何にもアメリカらしい食事の組み合わせと空腹感・疲れが重なって不思議と笑いが出てくる。「自分はこんなところで何してるんだろう…」と感じつつ、妙にハイテンションだ。

そんな中、ベンツなどの高級車に乗って現われ、食事や寄付金を貰いに来る白人さん達もいる。生活保護を受けざるを得ない人らしいのだか、まず車を売るという発想が無いあたりが、いかにもアメリカ人らしい。

立ち仕事で疲れた夜は、無料の英会話教室に。狭くて暗い部屋で10人ほどのメキシカンたちとイスを並べMillion、Billonなど数字の言い方などを習う。彼らよりほんのちょっとだけ英語を話せたこともあり、途中から彼らに教える側の先生役にされていた。こんな奴に習うのも可愛そうだなあ、と思いつつ楽しく貴重な時間を過ごす。

その中の一人が「みんな川を渡ってアメリカへ入国して来るんだよ。俺も赤ん坊を抱いて家族で渡ったんだ。」と教えてくれた。数ヶ月前まで日本の一大学生としてBoringな毎日を送っていた僕には想像もつかない。あるのか無いのか分からない将来に向かって、わずかな希望と共に日々全力で生きてるんだなあ、と感じる。

そんなこんなで、家なき子状態の1週間が過ぎていった。

新しく借りたアパートは大学から自転車で15分のところ。一軒家の中で共同生活、となり部屋のアメリカ人は、彼女がよく遊びに来ていてうるさかった。テレビなど無いから、英語の勉強も兼ねてTargetというスーパーで6ドルのアメリカ製ラジオを買う。「日本人なのにMade in USAのラジオ買ってるぞ!」とよく笑われたなあ…。アメリカではラジオと言えば「Made in Japan」らしい…。

やっと落ち着ける部屋を持つと、アメリカでの食事に参っていたこともあり、念願の「炊飯器」を借りる。バスで日系スーパー「ヤオハン」に行き、コメに合いそうな日本食のおかずを買う。早速新品炊飯器でコメを炊き、最初におかずにしたのがヤオハンで購入の缶詰「さんまの蒲焼」!日本では好んで買わないが、この時はホントうまかった!

日本食と言えば、ある日ちょっと離れたマーケット内に、牛丼「吉野家」の看板を見つけた。ほとんど日本の形式と同じだったが1点だけ大きな違いが…。細かいことなんて気にしないアメリカ人、日本のように「つゆだく」などと、「つゆの量」を調整する事はない。出て来たものはつゆだく×10倍。味噌汁の中にごはんを入れたような、ベチャベチャな牛丼だった。それでも当時の自分には贅沢品!

「炊飯器」はその後も大活躍、やはり日本人だなあとつくづく思う。中華ファーストフード店でテイクアウトしたものをおかずに、アメリカビールMillerを飲みながら、コメを食べては学校での疲れを取る毎日だった。

言葉にも徐々に慣れ、生活も安定してきたこともあり、アメリカの自動車免許を取ることを決める…。
教会で過ごす
SOSセンターでサンドイッチを作る

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ハンドル Anything 西村
性別
星座 しし
血液型 A
ホームページ http://www.anything.ne.jp
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メッセージ ■有限会社エニシング代表取締役社長

1973年広島市出身、1996年中央大学卒。大学3年のとき、1年弱、アメリカ一人旅(留学)。
2000年、5年お世話になった食品メーカー江崎グリコを脱サラ。当初は「漢字TシャツAnything」開始。原宿などの路上で販売を始める。

2004年から前掛けの製造を開始し、帆前掛けの産地・豊橋の職人さんたちと出会い「前掛けAnything」スタート。
ニューヨークへの前掛け飛び込み営業、毎年のNYやロンドン、パリ展示会、など様々な経験をしながら現在に至る。
2019年6月に330坪の土地を買い、豊橋前掛けファクトリー設立。
悪玉コレステロールUPに悩む、3児の父(^-^)
●趣味:プロレス格闘技、旅、うまい酒を気の合う仲間で楽しむこと

この日記では、日々思ったことや仕事などについて思うままに書いております。


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