何も無い中での前掛けイベント
いよいよイベント当日。 朝、6時に起床。 だが、実演で見せるか、が決まっていない。
御大・芳賀さんに 「西村くん、まあ、今更あせっても仕方ないぞ。うまい朝飯でも食おう。」 と言っていただき、
朝8時に芳賀さん、秀夫さんのホテルへ向かう。
まず、染め職人・秀夫さんの部屋へ向かう。 秀夫さん「荷物どうだった?」
西村「すみません、ダメですね…」
秀夫さん「そうか…、そういえば…」
と、ご自身の荷物の中から小さな鉛筆大のものを取り出す。
「何かの役に立つと思って、型紙を彫る’刃’は持ってきてるんだけど…。あと、渋紙も少しならあるよ。」
秀夫さんは、何かの時に、と、わざわざその2つを持参してくれていた。
刃は、前掛けを染める時の「型」を彫る時に使う。 その染めの型は、「渋紙(しぶがみ)」という和紙に柿渋を塗って紙を強くしたものを使うのだが、その渋紙も持って来てくれていた!
「え〜!!!それですよ〜!それ!!! ぜひ、今回の実演イベントのメインは、秀夫さんの型紙彫りの実演にしましょう!!!」
まず、その型を彫る作業を目の前で見てもらって、その後’和紙’の上に型染めの簡単な体験をしてもらう。
それで今日のイベントの骨子は決まった。
どうでしょう?
秀夫さんも「俺でよければ…」と快諾してくれる。
8時からホテル1階のイングリッシュブレックファーストを食べさせてくれるレストランで美味しい朝食。 見るからにイギリス紳士、という立ち振る舞いの店員さんから
「あなた方3人は、見るからにイタリア来たんですね?」
「(お、これがイングリッシュジョーク?)そう、惜しいですね、イタリアの隣の国から来たんですよ。」
というやりとりを^^;
朝食のイングリッシュマフィンは、写真の通り、本当に美味しく、元気が出てきた。
さてさて、今日は大変な一日になるぞ〜
朝食後、10時開店のチャイナタウンのお店へ、地下鉄で秀夫さんと向かう。
古い雑居ビルのようなお店で「和紙」「染め体験用の刷毛」「インク」を調達。和紙は高かったなあ…^^;
それから会場となる紀伊国屋さんへ。
手伝っていただく文子さんやユーコさんも到着し、控室で準備を開始。
秀夫さんは出際よく、ご自身の刃を使って和紙をポストカード大に切ってくれる。
その横で、インクを刷毛に付けて、それぞれ5種類の漢字の書かれた小さな型紙を和紙の上に置いて、ステンシルのように色をつけてみると…、 うん、これはいける。 きっとNYの人たちにも楽しんでもらえますよ。
14時、まずは、僕の英語でのトークが始まる。
来ていただいたお客さまにより満足してもらうため、それぞれ紙とペンを配り「クイズ形式」にする。
前掛けに関する質問に答えてもらい、一番の正解者に景品をプレゼント。
TOYOTAと前掛けの関係から、日本のものづくり、仕事観についてもお話する。
僕からのトークが終わった後は、いよいよ秀夫さんの型彫りの実演!
「志」
の文字をゆっくりと彫ってくれる。 会場の皆さんも、じーっと静かに興味深く集中して見てくれている。
「出来ました」と型紙をかざすと、柄の部分から向こう側の明かりがさしこんで来てすばらしい。
Wow!パチパチパチパチ〜と、拍手がわきあがる。
大成功だ。
「では、1階に会場を移して、染めの体験をしましょう。」
漢字の書かれた小さな5つの型紙の中から1つを選び、和紙に染の体験をしてもらう。
無料、ということもあり、次々とお客様が集まってきてくれる。
前掛けについて、染めについて、型について、漢字の意味について、など、お一人お一人と話しながら、前掛け染め体験をしてもらう。
2時間ちょっとで約60名の方々が体験してくださった。
商品がまったく無いため、会場の紀伊国屋さんの売上、には貢献できなかったが、 いろんな人たちと話し、時にはメールアドレスも交換し、ご縁が出来た。
初日3時間のイベント、なんとか終了。
みなさん、本当にありがとうございました。
「よし、NYで一番うまい肉、を食べに行こう!西村くん、予約してくれないか。」
御大・芳賀さんの一言で、みんなで終了後、美味しい美味しいステーキを食べに行く。
長い長い一日が終わる。
終わって思ったことは
・いざとなれば「裸一貫」でなんでもできる
・その時に頼れるのは自分の腕のみ (たまたま僕は人に伝える、話す、ということが出来た。 職人の秀夫さんは、まさに腕一本、で言葉の通じない相手にも伝えることが出来る)
・売上、はゼロだったが、前掛けが10枚売れたところで、せいぜい4万円。 そのためにNYに来ているのではない。もっともっと大きなものを掴みに来ているんだから今回は1日60人に人たちと前掛けを通じて話が出来たことで善し、としよう
・何にも無くても、前掛け1枚あれば、世界中で伝える、ということはできるんだ
非常に貴重な体験をした。 これをクリアしたことでもっと腹も据わったかなあ^^;
同時に思ったこと…
今回の悔しいやり場の無い思いは、きっと将来取り返すぞ
|
こちらがイギリス紳士!
会場控室で染め体験のテスト
本番!秀夫さんの彫りの実演
NYの皆さんにも喜んでもらう
こちらの女性とは、藍、紺色、などについてじっくりお話することができた
|