スポーツが文化になる
「女子サッカーを文化にしたい」 2015年FIFA女子W杯カナダ大会で準優勝し、凱旋帰国したなでしこジャパンの主将・宮間選手が語り、当時、流行語のように使われたことばである。
ただ、このことばだけが独り歩きし、果たして「女子サッカーが文化になった状態」を具体的にイメージして使っている人はどれだけいるのだろうか、私は疑問でならなかったし、いまでもその答えは自分でも見出されていない。 このことは以前、私も取材を受けたウェブマガジンの対談の中でもお話しし、取り上げていただいた。
今日、北本監督を丁寧に取材してくださった別のライターの方の記事がアップされた。
勝ち負けだけが全てじゃない!我が街にサッカーがある喜びを分かち合いたい。<オルカ鴨川FC監督兼GM 北本綾子インタビュー&取材後記> https://soccer-baka.jp/archives/5902
今季、なでしこリーグは極めて厳しいシーズンになると言われている。 昨年リオ五輪の本戦出場を逃し、2000年にあったシドニー五輪ショックと同様の危機が訪れると言われていたが、なでしこ1部に新規参入した長野パルセイロのがんばりなどもあり、心配されていたほどの状況には陥らなかった。 というよりは、陥ってないように見えた。
だが、現実にはやはり厳しい状況になってきていた。 事実、今シーズン、リーグも集客に力を入れ、さまざまな新たなチャレンジをし、各クラブも意識を高め集客に取り組んでいると思うが、ここまで昨シーズンを大幅に下回る観客数となっている。
オルカもまた例外ではなく、期待されたホーム開幕戦、1,000人を大きく下回ってしまった。
人数だけがもちろん全てではないし、もっとも、人口3万人ちょっとの鴨川市の試合に1,000人以上の方にコンスタントに集まっていただくのは容易なことではないのはわかっている。 一発花火ではなく、じっくりとさまざまな努力をしていきながら、じわりじわりと増えていけば、それが本物だとも思う。
冒頭のことばを「スポーツを文化にする」と置き換えれば、日本ではまだまだスポーツが文化になっているとは言い難いかもしれない。 「勝ち負けが全てじゃない」というコラムのタイトル通り、2・3月に渡欧して各国を巡って思ったのは、勝敗以前にそもそも地域の人たちが“おらが町”のクラブに誇りと愛着をもち、ある種応援すること、支援することが当たり前、もっと言えば、その土地に住む人たちの責務でもあるのだ。 ある種、これが漠然としながらもスポーツが文化になっている一つの状況であると思う。
じゃあ、それを日本ですぐできるか、と言えば、違うだろう。 多くのスポーツクラブはそのチームの強い弱いで観客数がだいぶ左右されるケースが多いし、順位や勝ち負けで応援に行く、行かないという選択肢が生まれてしまっている限りにおいては、スポーツは文化にはなっていないと考える。
ただ、チームは常に勝利を目指す。 逆説的に言えば、みんなが“おらが町”のクラブとして応援、支援すればするほど、チームも強くなるとも言える。そして、チームが強くなれば、もっともっと応援、支援の熱も高まる。そういった好循環が生まれていく。 これは欧州でも言えることだと思う。
だから、結局はチームはやはり強くなければならない。常に勝利、チャンピオンを目指さなければならないとも思う。
しかし、勝負事。 世の中、そうそううまくは行かない。 そういうところも含めて、地域やサポーターが一緒になり、クラブやチームをサポートしていく。 そういうことなんだと思う。
オルカはまだまだ新参者のチームだ。 ここまでとんでもない勢いでトップチームはカテゴリーを上げてきた。史上最速とも言われる。 だからこそ、クラブがそのスピードに追いついていないというところもある。クラブ組織の強化、さらにはビジョンをより明確にして、自信をもってオルカ流の未来を目指すというクラブ、そして地域になっていくことが長い目で見た時、大切だと考えている。
新参者だからこそ、これまでの既成概念にとらわれず、おもしろい女子サッカークラブを創れるという思いもあるし、だからこそ、私がクラブの一員として動いているということもある。 既存のサッカークラブをつくるだけなら、私はそもそも興味はもたないだろうし、クラブは私を必要ともしないだろう。
「スポーツが文化になる」 これからももがき苦しみながら、追求し、実行していきたい。
[WALK:-]
|
|